第七回・Black Sabbath〜聴けばモテる!ポピュラーミュージック通信〜

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海外のレコード店に行くと、長髪で黒いTシャツのスタッフが大抵一人はいます。彼らはバンド活動の傍ら、そこで収入を得ています。そのバンドは間違いないなくヘヴィメタルを演奏しています。重厚なギターにのせて、悪魔や死神について叫ぶ、アレです。現在定着している、このオカルト的なイメージの起源に、今回はさかのぼります。

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ワーキングクラスからメタルゴッドへ。そう、ブラックサバスです。

音楽にしがみついた少年時代

1968年、イギリス国内有数の工業地帯であるバーミンガムで結成。労働者階級が集まり、決して治安が良いとは言えない地域です。以前ご紹介したザ・スミスが誕生したマンチェスターでは「この町を出るには、サッカー選手になるか、ロックスターになるしかない」と言われていました。バーミンガムでも似たようなものでした。

バンドの中心人物はボーカリストのオジー・オズボーンと、ギタリスト兼作曲者のトニー・アイオミ。二人ともなかなか波乱に満ちた少年時代を送りました。

オジーは共働きの家庭に、六人兄弟の四人目として生まれました。ディスレクシアとADHDを抱え、誰も手をつけられない、まさに悪ガキでした。15歳で働き始め、工事現場、工場、食肉処理場を転々としました。窃盗の常習犯であり、食肉処理場に吊るされている豚一頭から大量の女性下着まで、目につくものは何でも持ち去りました。10代にして牢屋送りになったオジーですが、単なる無法者ではありませんでした。ラジオでビートルズの「She Loves You」を聞いた瞬間、「俺はこれで飯を食っていく」と決心。滅茶苦茶な生活を送りながらも、心の中には夢が燃えていました。

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アイオミはいじめられっ子でした。不良少年たちから逃げる最中に転び、上唇を激しく損傷。生涯残る傷跡を作ってしまいます。心を癒してくれるのは音楽であり、ギターでした。しかし第二の悲劇が訪れます。板金工場で働いていた最中、事故で中指と薬指の先端を失います。それでも彼は希望を手放しませんでした。義手をつけた力の入らない指で弦を押さえる方法を模索、限界までチューニングを下げれば、押さえられる程度に弦が緩むことを発見します。その結果、今まで誰も聞いたことがない、図太く響き渡る低音が生まれました。

死神による救済

不遇の少年時代を送った二人が出会い、唯一無地の音楽を作り始めました。楽譜が読めないオジーは、アイオミが奏でるどんな曲にも順応し、自由自在に歌をのせました。俺の生きる道はこれしかない。歌声に滲み出る切迫した思いは、人々の心を打ちました。地響きのようなバスドラム、心臓を射抜くベース、業火のごとく全てを包み込むギター、そして死神の笑い声のように高らかに響く歌声。ラブ&ピースに彩られた60年代の終焉と共に現れ、ロックの新しい側面を世界に提示しました。

黒装束に身を包み、髪を肩まで伸ばし、首からは巨大な十字架がぶら下がっている。彼らが体現していたのは、自分たちを不遇な境遇に追い詰めた社会への復讐であり、同じように苦しんでいる人々への救済でした。他人に同調なんてしなくていい。自分自身であり続けることが最も大事だ。その深い暗闇に安らぎを見つけた人の数は、その後誕生する幾千ものメタルバンドが物語っています。

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