RUNDMCとの出会いとAdidasスーパースター

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「なぁ、佐々木ってランディーエムシーって知ってる?」

放課後、木村がいつものように突然質問してきた。どうせまた古いレスラーか何かだろうと思ったけど、しらないと答えた。

木村は他のクラスメイトとは少し趣味が違っていた。周りのみんなはハイスタンダードやKEMURI、スネイルランプとかのメロコアやスカコアを聴き、ディッキーズにVANSでスケボーなんかにいそしんでいた。でも木村は違ってて、プロレスやちょっと古い音楽、古着が好きなオシャレなヤツ。おやじさんの影響らしい。

俺はというと、中学時代はスラムダンクの影響でZARDやWANDSを聴いたり、当時流行っていたGLAYなんかをなんとなく聴いてたくらいだった。けど、高校2年生になり、ハイスタやスネイルランプなんかを聞いていた。それも、なんとなく流れで聞いていただけで、音楽にはそれほど興味もなかった。

そんな1999年の夏のある放課後、木村に教えてもらったRUN DMCというアーティスト。アメリカのHIPHOPスターらしい。

ふ〜ん…という俺に木村はCDウォークマンとアルバムを渡し、聴いてみろ、という。

さっきまで木村が聞いていたウォークマンの再生ボタンを押すと、聴いたことのないドラム音と共に流れてきたのはこの曲だった。

歪んだギターも無ければシャウトもない、シンプルなビートループに絡みつくラップとスクラッチ。今でこそこういう表現が浮かぶが、当時はただシビれた。

何を言ってるかななんてもちろんわからない。けど聴いたことのないラップやスクラッチ音に惚れ込んでしまった。そのとき聞かせてくれたのはRun Dmcという名前をのままかざしたアルバムだった。

その日、そのアルバムを借り、一日中聞いていた。そして次の日、俺はadidasのスーパースターを探しに、学校をサボって木村と共に街に出ることになる。

adidasのスニーカーが欲しい!ファッションと音楽への目覚め

当時世の中では、インターネットが徐々に普及してきていた。今みたいに早くも無いしyoutubeもなかったけど、常時接続ができるようになってきていた。そんな常時接続が出来る友達の家に学校帰りに寄った。

さっき借りたアルバムを聞きながら、俺は早速RUNDMCについて調べて回ったのだ。今ほど情報もないし、英語もわからない。

そんな乏しい情報とあわせて、アルバムの中の解説を読んでいた。そしてその中で気になったのがadidasの存在。

1999年当時のラッパーといえばダボダボの服装にティンバーランドのブーツ、ヤンキースのキャップ、という出で立ち。

でも80年代のオールドスクールラッパーRUNDMCは違う。

上下adidasのジャージ、そしてハットにゴールドチェーン。

他を見ても全体的に黒で細めにまとめ、足元にはadidasスーパースター。このファッションは当時のどのスタイルにもなくとても新鮮だった。でも、ジャージ上下はいまいち好みじゃなかったので、細めのブラックデニムに白のスーパースターを合わせよう!と思った。

当時、服は好きだったけどカッコつけるのがなんとなく恥ずかしかった。けど、モテたい!なんていう気持ちはもちろんあった。だからboonsmartなんかのファッション雑誌をよく読んでた。

で、そんな俺を後押ししてくれたのがRUNDMCと、それを貸してくれた木村だった。早速ショートメールで

「RUNDMCありがとう、明日学校サボって買い物いこう」

と木村に送った。数分後に

「いいよ」

と素っ気ない返事。翌朝、昼前にいつもの駅に集合し、二駅ほど移動し、街一番の繁華街に行った。

靴屋の前にレコード屋を連れまわされることに…

この街は木村の行きつけということもあり、さっさと靴屋に行きたかった俺を無視し、レコード屋を何軒も付き合わされた。木村の家にはおやじさんの趣味で古いレコードがたくさんあるらしい。そこで木村もCD屋ではなくレコード屋を周り、お気に入りを見つけるのが好きなのだそうだ。

俺はといえば、まともに音楽に興味もない人生だったのに、たった20時間くらい前にRUNDMCにヤラれたド素人。何がなんだかよくわからないながらに、木村の勧めるレコードを、手を震わせながら試聴機に乗せ針を落としてみては『うわ、なにこれ!すげえカッコイイじゃん!!』と感動しっぱなし。

気が付くと昼飯も食わないまま16時ごろまでレコード屋めぐり。俺の家にはレコードプレーヤーはないので最後に中古CD屋さんに連れて行ってもらい、何枚かアルバムを買った。その時買ったのはbeastyboysのIll Communication、PUBLIC ENEMYのYo Bum Rush the Showなど。(この2枚を選んだことで、その後の偏った音楽趣味が形成されることになるとは…笑)

マックで安いハンバーガーを食べ、少し休憩してからようやくスニーカー探しへ。

当時はいわゆるハイテクスニーカーが主流で、NIKEやREEBOKが流行っていた。でも今回探すのはローテクスニーカーのadidasスーパースター。

なかなかいいスニーカーが見つからず、気が付くともう19時を過ぎていた。なかなか見つからないなか、木村からの提案が。

「佐々木って古着、買ったことある?抵抗無いなら、古着屋さんで探すのもありかもな。」

当時、古着も人気だったが、あまり積極的に欲しいとも思ってなかった。なので、特に抵抗はないけどよくわからない、と返答。

とりあえず見てみよう、ということで木村行きつけの古着へ。

古着屋で見つけたadidasスーパースター

そしてそこで見つけたのは、白に黒のラインが入ったシンプルなadidas スーパースター。

それまで回った店の場合、シュータン部分(靴紐の下のロゴ部分)が革製でぺたっとしたものが多かった。でも俺が欲しかったのはシュータン部分が綿入りでボリュームのあるもの。

ようやく見つけたそいつは、古着らしいちょっとした黄ばみがあるものの、破れとかもなく、十分履ける品物。とはいえ、古着の靴なんて買ったこともないし、店員の目を盗んで臭いを嗅いだりしてみた。特に臭いもなかったし、サイズもバッチリで値段もお手頃。即購入。

気が付くともう21時をまわっていた。すっかり疲れた二人は言葉少なに電車に揺られ、最寄り駅で下車。

駅から家まで10分くらいは方向が同じだったこともあり、俺は夢中で木村を質問攻めにした。何を質問したかなんてもちろん覚えてないけど、あいつのおかげで俺は【My Adidas】と出会う事ができた。

<続く>

※この物語は【カルチャー×短編小説】をテーマにしたフィクションです

投稿者プロフィール

jgglr
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カルチャーをベースにした短編小説などを書いてます。
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